AI時代、私たちに求められる姿勢 - AMOREPACIFIC STORIES
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2026.09.08
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AI時代、私たちに求められる姿勢

日常の中のDEIインサイト #3

 

文

ド・ジウォン CSRチーム

 

Editor’s Note


私は普段、何にでも「クエスチョンマーク(?)」を投げかけてみる方です。一度気になり始めると、広告のコピーひとつすら素通りすることができません。周りからは「考えすぎ」と言われることもありますが、そんな自分の好奇心を、私はけっこう面白がっています。

今回のコラムでは、そんなふうに日常のあちこちで見つけた小さな「問い」を出発点に思いを巡らせてみたいと思います。言葉や表現、製品やサービス、ブランドや社会にまつわる多様な事例に目を向けながら、慣れ親しんだ基準を一度違う角度から見直してみたいと思います。難しくなりすぎず、重たくなりすぎず、読み終えた後には身の回りが少し違って見えてくるような、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)の話をお届けします。

 

 

<バランスが必要なAI時代> 出典:AIで生成した画像

 

 

#INTRO

 

AIは、一般的に客観的で中立的な技術のように考えられています。 人間が判断する場合、偏見が入り込む可能性がありますが、AIが判断すると、より公正であるという期待があります。 しかし、AIの回答もやはり、既に存在する画像やデータをもとに生み出されています。もし、そのデータの中に社会が長い間繰り返してきた固定概念が残っていれば、AIはその偏見まで客観的な結果のように再現することができます。問題はその結果があまりにも自然で、もっともらしく見えるということです。だから、 私たちはAIが示す「普通」を改めて見直す必要があります。その平均は本当に皆の平均なのでしょうか。

 

今日は、AIが生み出す映像や技術の体験を通じて、 DE&I(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)の視点から私たちが何に目を向けるべきなのかお話ししたいと思います。

 

 

<生成AIで生成したリーバイスの広告モデルの画像> 出典:リーバイス

 

 

AIが生み出すダイバーシティは十分だろうか

 

AIが生成した人物は、広告やコンテンツでも活用されています。 撮影することなく、様々な人物の画像を生成でき、ブランドが望む雰囲気を素早く形にできるということから魅力的なツールです。 特に、様々な体形や肌の色のモデルを表現することが難しかった限界を補い、お客様が自分に近いモデルを参考にして製品を選ぶときの助けになります。

 

では、AIで実現した様々なモデルを見せるだけでダイバーシティやインクルージョンも併せて広がるのでしょうか。2023年にリーバイスは、消費者が様々な体形のモデルによって製品を確認できるようにAIで生成したモデルを活用するという計画を発表しました。1 すると、様々なモデルを実際に雇用する代わりにAIでダイバーシティを実現しようとしているのではないのかという批判が相次ぎました。これに対し、リーバイスは発表6日後に追加説明を行い、実際のモデルの比重を下げる計画はなく、この試験的な試みがDE&I活動に代わるものでもないと明らかにしました。

 

この事例は、「多様に見える結果」と「多様性をつくるプロセス」が同じではないということを示しています。 AIモデルは、画面に様々な人物を見せることができますが、様々な人がモデルやクリエイターとして参加する機会まで保障してくれるわけではありません。 画面の中のダイバーシティを広げることも重要ですが、それだけでDE&Iが実現するのではありません。

 

AIが生成した結果もまた、批判的に目配りする必要があります。プロンプトに「様々なモデルを作って」と入力すると、肌の色だけ異なり、顔の形や体型は似通った結果が出る可能性もあります。異なる年齢と体型をリクエストしたのに、肌の質感はすべてなめらかに表現されたり、年齢を重ねた人の姿が私たちの慣れ親しんできた固定観念に沿って描かれたりする可能性があります。したがって、AIモデルを活用する際には、そのプロセスでどのようなプロンプトを使用したのか、その中に偏見が潜んでいないかを注意深く確認する必要があります。

 

 

<視覚障がい者向けの話すカメラアプリ「Seeing AI」> 出典:Apple App Store

 

 

AIも差別をする?

 

マイクロソフトの「Seeing AI」は、視覚障がい者と低視力ユーザー向けに身の回りの文字や物を音声で説明するサービスです。印刷された文章を読み上げたり、商品のバーコードを読み取ったりして画像に含まれている内容を伝えることで、視覚情報へのアクセスを容易にします。注目すべき点は、このサービスが障がい者を単なる利用者として捉えるにとどまらず、開発や設計のプロセスにも参加してもらい、ともに進めたということです。2

 

音声を文字に変換する機能は、聴覚障がい者のコンテンツのアクセシビリティを向上させてくれます。 複雑な文章を容易に読み解くAIは、認知的困難があったり、馴染みのない言語で情報に接したりする人たちにとって、手助けとなる可能性があります。翻訳や音声案内、画像の説明のような機能も情報とサービスに参加できる範囲を広げてくれます。

 

AIは、アクセシビリティを向上させますが、こうした技術がすべての人に同じ水準で機能するものではありません。 音声認識システムは、特定のイントネーションや方言を認識できないことが多く、顔認識技術は性別・年齢・人種によって精度が異なる場合があるという研究が明らかにされています。 米国立標準技術研究所(NIST)も多くの顔認識アルゴリズムにおいて人口集団による性能の違いがあることを確認しています。3

 

結局、ある人にとっては便利な技術が、別の人にとっては自分自身を証明しなければならない壁になることもあります。音声コマンドを何度も繰り返したり、顔を認識させるために照明や角度を何度も変えたりしなければならないのなら、技術の便利さがすべての人に等しく提供されているとは言い難いのではないでしょうか。

 

 

<Monk Skin Tone ScaleとPixel用のReal Tone機能> 出典:Google

 

 

このような偏りを減らし、技術の性能をより公正に評価しようとする試みも続いています。 グーグルは、ハーバード大学の社会学者のエリス・モンク博士と共同で10段階からなる「Monk Skin Tone Scale」を公開しました。 従来広く使われていた肌の尺度が暗い肌の色を十分に表現できないという問題意識から出発した尺度で、グーグルはこれを活用して 顔検出モデルが肌の色によって異なる結果を示さないかを評価し、画像検索やGoogleフォトのReal Toneフィルター、Pixelカメラが様々な肌の色をより正確に表現するように改善してきました。4

 

もちろん、一つの尺度だけですべての偏りを解消できるわけではありません。同じ肌でも照明や撮影環境によって違って見えることがあり、これを分類し説明する方法には、社会・文化的な背景が影響するからです。こうした限界にもグーグルの試みは、 ダイバーシティやインクルージョンを測定し、改善すべき技術性能の項目として扱ったという点で大きな意義があります。

 

 

<人工知能倫理原則> 出典:科学技術情報通信部

 

 

AI 基本法が投げかける新たな問い

 

企業の技術的な試みとともに、AIを安全かつインクルーシブに活用するための制度的な基準も具体化されています。韓国では2026年1月22日から 「人工知能の発展と信頼の基盤づくり等に関する基本法」が施行されました。5 この法律では、AI産業の発展だけでなく、透明性と安全性、利用者の保護についても定めています。生成AIや高影響AIを利用した製品やサービスを提供する事業者は、利用者にその技術が活用されているという事実を伝え、生成AIが作り出したものには、AIにより生成されたという事実を表示しなければなりません。実際のものと区別することが難しい仮想の画像や映像・音響も利用者が明確に分かるように告知または適切な表示を行う必要があります。

 

2026年7月21日から施行された改正条項には、「人工知能の利用に困難を抱える人々」への視点も新たに盛り込まれました。 国や地方自治体が障がい者と高齢者など、AI製品やサービスの利用に困難を抱える人々の参加と意見を政策に反映し、高影響AIの影響評価にも彼らの特性が反映されるようにしたものです。法律が提示する方向性は明らかです。 AIの進化において技術を利用することが困難な人々の経験まで政策の中でともに捉えていくということです。

 

科学技術情報通信部が公開した「人工知能倫理原則(案)」も人間の尊厳性、社会の公共善、技術の信頼性を3つの価値として提示しています。6 そのための6原則には公正性、包摂性と透明性が含まれています。AIへの信頼が精度だけで生まれるのではなく、誰もが排除されずに利用できるインクルーシブな体験ともつながっているという意味です。企業は、法的義務を守ることから一歩前に進むことができます。AIが生成した画像や文章が誰をデフォルトとしているのか、そのプロセスから抜け落ちた視点はないのかを確認するのです。誤りや偏りを正す手続きがあるのか、影響を受けた利用者が問題を提起し、回答を受け取る窓口が設けられているのかも重要です。

 

AIは、問いへの答えを提示できますが、選択の結果に対する責任まで代わりに負ってはくれません。その結果をそのまま鵜呑みにして使うか、別の視点を加えるかは人間の判断に委ねられています。だからこそ、 AI時代には技術を導入するスピードに合わせて、それを企画し使用する組織の判断と責任がますます重要になると考えています。

 

 

#OUTRO

 

AIが日常に身近なものになるにつれてDE&Iが考慮すべき範囲も広がっています。今や、ダイバーシティやインクルージョンは、広告の中に様々な人物が登場しているかにとどまらず、技術が異なる背景をもつ人を正確に認識し、誰に対しても公正に機能するかまで含む領域へと広がっています。私たちは AIが開いてくれる可能性に注目すると同時に、その便利さを十分に享受できない人はいないか、顧みる必要があります。すべての人が尊重されるためにAIが提示する「普通」を当たり前のものとして受け入れないこと。これがAI時代を生きる私たちに求められる姿勢ではないでしょうか。 今日だけは馴染みのある「普通」に小さな問いを一つ投げかけてみてください。

 

 

 

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ド・ジウォン

アモーレパシフィック CSRチーム
CSR·DEI担当 메일
  • 人々がそれぞれ異なる形で世界を経験しているということに、とても関心があります。
  • すべての人のためのインクルーシブな体験について考え、世界の事例と現場で得た実務的な気づきをお届けします。

 

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