アモーレ龍山(ヨンサン)リニューアル デザインストーリー
執筆
Noah Shin, Juyeon Oh Restore Business Team

アモーレ龍山リニューアル・プロジェクトの出発点は、単に店舗を新しく飾り直すことではありませんでした。まず投げかけた問いは、「アモーレパシフィック本社に位置する店舗、アモーレ龍山は、どのような役割を担うべきなのか」でした。従来のアモーレ龍山は販売中心の空間として運営されてきましたが、アモーレパシフィック本社内部の空間だという象徴性に比べて、会社の現在と未来を十分に示していくには、物理的にも体験的にも限界がありました。アモーレパシフィックの多様なブランドや革新商品、パーソナライズドサービス、そして、研究施設は存在しましたが、お客さまやパートナーがこれらを一つの流れとして体験できる接点はなかったのです。そこで、今回のプロジェクトは、まさにその部分を設計し直すことから始まりました。


*リニューアル前のアモーレ龍山
既存の47坪規模の空間を全面的に再構築して、150坪規模のブランドおよびサービスの中心空間へと拡張し、既存の顧客研究センターとシティラボを統合し、さらにミートアップ・イベント空間を加え、総350坪を超える統合空間へと進化させました。これは単なる面積の拡張ではなく、アモーレパシフィックのビジョン「Create New Beauty」を空間とお客さま体験として具現化した、House of New Beautyへの転換でした。商品を販売する店舗にとどまらず、ブランド・未来のビューティー・研究・交流が一つの構造の中でつながる、アモーレパシフィック本社型のプラットフォームへと再構成したのです。こうして、新しいアモーレ龍山は、さまざまな機能の集合ではなく、一つのコンセプトのもとに統合された体験構造として完成しました。
01. アモーレパシフィック本社の建築表現から、体験がつながる空間デザインへ
インテリアデザインにおいては、アモーレパシフィック本社の建築が持つアイデンティティや雰囲気を、店舗の中に自然につないでいくことを重視しました。本社建築が見せる抑制の効いた造形美や精緻な素材感、そして、現代的な構造表現をリテール空間へと落とし込み、空間全体からアモーレパシフィックらしさが感じられるようデザインの方向性を定めました。これによって、アモーレ龍山リニューアルは、本社の中の一つの店舗にとどまらず、ブランド哲学と空間体験が結びついた連続したシーンとして完成させました。
空間ごとに異なる印象、一つの流れとしてつながる体験

(写真説明:①ギフト空間 ②ラボエイチ スカルプバー ③アモーレ ビューティーラボ―香り研究室
④アモーレ ビューティーラボ―シティラボ 肌&頭皮相談室 ⑤ミートアップラウンジ ⑥アモーレ ビスポーク ファクトリー)
アモーレ龍山のリニューアルは、すべての空間を同じ表情で統一するのではなく、それぞれの空間の役割や体験に応じて、異なる雰囲気を持たせるように設計しました。ギフト空間(Gift Selection)は、落ち着いたダークウッドのトーンで温かく密度のある印象を与え、ファサード右側の調製室(Amore Bespoke Factory)は、明るく清潔感のあるホワイトトーンで先進的で洗練されたイメージを強調しました。ラボエイチ スカルプバー(LABO-H SCALP BAR)は落ち着いたウッドトーンで安定感を加え、シティラボ(CITY LAB diagnosis & consulting)はガラスブロックを用いて透明で実験的な雰囲気をつくりました。また、アモーレ ビューティーラボ(Amore Beauty Lab)の香り研究室(Fragrance Lab)は、スマートガラスミラーを採用し、研究が行われていない時間には、お客さまに開放されるフレキシブルに活用できる空間として計画し、より親しみやすく開かれた印象を持たせようとしました。多様なビジネス活動が行われるミートアップラウンジ(MEET-UP LOUNGE)は、リサイクル什器を活用してサステナビリティを取り入れながらも、心地よさとインパクトを同時に感じられるように構成しました。
このように、それぞれの空間は異なる素材と雰囲気を持ちながらも、全体としては一つの秩序の中で自然に調和するように整えました。お客さまは空間を移動しながら、それぞれ異なる場面を体験し、その変化の中で、ブランドやサービスの性格をより鮮明に認識していただくことになります。異なる表情を持つ空間が一つの流れとしてつながり、アモーレ龍山ならではの体験空間を完成させたのです。
空間の中心となる中央ショールーム

中央ショールームは、この方向性がもっとも凝縮されている場所です。アモーレ龍山のゴールデンゾーンであり、プロジェクトの心臓部として、4本の柱の軸の中に、どこからでもアクセス可能な円形キュレーションゾーンを計画しました。ここは、特定ブランドをディスプレイするだけの場所ではなく、新製品ローンチ、ビューティーデバイス体験、お客さま参加型コンテンツなど、多様なプログラムに柔軟に対応できる可変型のステージとしてデザインしました。中央の円形照明もまた、単なる照明装置にとどまらず、空間全体にリズムと象徴性を与える核心的な要素として機能するように設計しました。これによって中央ショールームは、単なる展示空間にとどまらず、お客さまにアモーレ龍山をもっとも印象深く記憶していただくための、中心となるシーンとして機能しています。
柔軟な運営を見据えた背面の体験空間

背面のブランド体験空間は、特定のカテゴリに固定されるのではなく、成長する市場や話題性のある商品で、常にアップデートしていけるよう設計しました。
中央にはメイクアップの実演が可能なフレキシブルに対応できる空間を配し、周辺には、ブランドごとのメッセージや代表商品をディスプレイする壁面棚の構造で、体験と展示が同時に機能する環境をつくりました。これにより、お客さまは単に商品を眺めるだけでなく、自ら試し、体験しながら、ブランドをより立体的に理解することができます。このように変化する市場の流れに合わせて柔軟に対応できる構造を備えることも、アモーレ龍山のリニューアルにおいて重視した設計基準でした。
パーソナライズドサービスにとどまらず、パーソナルなビューティー体験として再定義された空間


ヘラのパーソナライズドサービス空間は、もっとも難しい課題の一つでした。限られた空間の中で、ご予約のお客さまと一般のお客さまの動線を分け、調製空間とテスト空間を効率的に区分しなければならなかったからです。パーソナライズドサービスの専門性とプライバシーを守りながらも、お客さまが自然にヘラの技術や商品を体験していただけるよう、デザインとお客さまの動線を併せて設計することがポイントでした。
特にセルフテスター空間は、ファンデーションやクッション、リップの数多くのSKUと多様なカラーバリエーションを一目で見渡せるようにしながらも、複雑にならず直感的な体験ができるものでなければなりませんでした。そのために、最小限の構造の中で、もっとも効果的に商品とカラーを認識できる什器の大きさや配置バランスやテスト環境について、議論を重ねました。ヘラが持つ豊富なカラーバリエーションと技術力を、より鮮明に伝えることが重要な基準でした。
ヘラの調製設備もまた、単なる機能装備にとどまらず、ブランドの技術力を示す象徴的な装置として計画しました。お客さまはロボットの動きや、その場での調製プロセスを通じて技術の精緻さを体験し、セルフテスター空間では自ら商品を試しながら、より能動的で広がりのあるビューティー体験をお楽しみいただけます。このように、新しいアモーレ龍山のヘラパーソナライズド空間は、デザインの完成度と効率的な動線の中で、ご予約のお客さまへの専門的なパーソナライズド体験と、一般のお客さまの自由なセルフ体験とが有機的につながるよう設計されました。これによって、ヘラの技術・カラー・サービスが、一つの空間の中でより一層立体的に伝わることを意図しました。
02. 抑制された美意識のうえに、変化に対応するVMDを

アモーレ龍山リニューアルのVMDデザインは、目を引く装飾を加えることよりも、時が経っても変わらない印象と、変化に柔軟に対応できる構造をつくることに焦点を置きました。ポイントは、抑制された配置バランスと端正なシルエット、余白を生かしたディスプレイによって安定した印象を与えること、そして、シーズンや商品の変化があっても、空間全体の印象を損なわないよう、入れ替えや追加がしやすい構造を設計することでした。
こうした方向性は、VMDの形態や運用方法全般に反映されました。商品を過剰に演出するよりも、低く広いプレートの上に整えて配置し、トレーやベース、モジュール什器のサイズや配置バランスを一定に揃えることで、空間全体の秩序を保とうとしました。また、頻繁に変化する要素は上部や小規模な領域に集めて、シーズンイシューやヒーロー商品の入れ替えにも柔軟に対応できるようにしました。
CMFもこの方向性に合わせました。透明素材で開放感と情報伝達の明確さを高め、ウッドトーンで自然な温かさとバランスを加えました。明るいストーン系とチャコール、ブラック、抑制されたメタリックの質感は、空間に安定感と構造的な秩序を与え、仕上げは過度な光沢よりも低光沢のマットな質感を中心に設定し、落ち着いた洗練された印象を与えるようにしました。
結果として、アモーレ龍山リニューアルのVMDは、強い装飾性よりも、配置バランスや素材、構造や運用の完成度を通じて、ブランドと空間の信頼感を築き上げていく方向で完成されました。
オブジェを加えて、ブランドの感性を広げるVMD演出

ブランド壁面棚の演出では、商品が主人公となることを守りつつ、上部にはブランドを想起させるオブジェを添えて、より印象的なシーンをつくろうとしました。クリエイティブセンター制作のオブジェ、アップサイクリング・オブジェ、アーティストとのコラボレーション・オブジェなどをともに検討し、単なる装飾にとどまらず、空間の中にアモーレパシフィックの感性やサステナビリティへの意識を、自然に取り入れることを目指しました。
特にメイクアップテーブルの上の什器は、ハイグロッシーなブラックのテーブルと調和すると同時に、さまざまなメイクアップアイテムのカラーがよりはっきりと際立って見えるよう、マットなブラックのトーンで開発しました。パッケージの化粧箱の生産過程で発生する余剰紙を素材にし、アーティストのイ・ウジェ氏とのコラボレーションによって、自社で発生した余剰紙をディスプレイ什器として再生させることで、アモーレ龍山リニューアルならではのオブジェへと広げました。加えて、多様なブランドや商品を紹介する空間の特性に合わせて、造形性と機能性を併せ持つモジュールシステムを新たに設計し、お客さまがより気軽に商品をお試しいただけるようにするとともに、運営の利便性も高めました。
本社建築表現を広げるキューブ什器

ブランドごとに共用で使用するハイライトディスプレイ用(キューブ)什器は、アモーレパシフィック本社の建築の造形表現を店舗の中へ広げる方法でアプローチしました。本社ファサードの垂直ルーバーのリズムと、端正なキューブ形状を小さなオブジェにアレンジして、建築が持つ印象が商品演出の中でも自然につながるようデザインしました。透明のアクリルと鏡面仕上げのアクリルを活用して光の反射と透過を効果的に活かし、繰り返される垂直のラインを加えた構造は、商品を引き立てながらも視覚的な深みとリズムを生み出す背景として機能します。また、床板には、ブランドカラーを反映できるようにすることで、ブランドごとの特性を柔軟に表現しつつも、入れ替えと再配置が可能となるよう設計し、運用面での活用度まで高めました。
中央テーブルを構成するVMD

中央円形テーブルもまた、単なる販売テーブルではなく、お客さまの視線と選択を誘導する重要なVMD装置として計画しました。クッションやベース商品のように、比較と選択が重要なカテゴリは、商品群やトーンの区分けが一目でわかるように配置し、曲面に沿って自然に視線が流れるよう構成しました。これによりお客さまは、より直感的に商品を比較し、選択できるようになっています。
03. 機能を超えて、空間の秩序をつくり出すグラフィックデザイン
サイネージやグラフィック、パッケージもまた、空間から切り離された付属要素ではなく、一つのブランド体験を構成する重要な表現として扱いました。フラッグシップの空間は、ブランド・サービス・商品・情報が同時に機能する複合環境であるため、名称の表記方法や情報の階層、素材や形が一貫していないと、全体の印象が分散しやすくなってしまします。したがって、お客さまが空間を容易に素早く、理解できるようにすると同時に、アモーレパシフィックらしい整った印象を保つ体系をつくることに、集中しました。

サイネージ
ブランド・カテゴリー名のサイネージは、運営の変化にフレキシブルに対応できるように設計しました。ブランドの配置が固定されない可能性を考慮し、壁面棚の上部には位置変更が容易なハンギング型を、テーブルや棚には状況に応じて自由に配置できる自立型サイネージを、併せて採用しました。

棚の上に置く自立型サイネージは、片面と両面のどちらでも使えるように設計し、中央の表記板を交換できる構造に製作することで、ブランド名やカテゴリ名を運営状況に合わせて柔軟に変更できるようにしました。ハンギング型サイネージは、壁面棚のメタルラックポール構造にL字型で掛けられるようデザインし、設置と入れ替えを容易にし、メタルフレームと透かし仕上げによって、軽やかで洗練された印象を与えるように構成しました。このように、ブランド名サイネージは単なる表記装置ではなく、変化可能な運営環境のなかでも一貫した秩序と印象を保つためのシステムとして計画しました。

抑制されたタイポグラフィと整えられたレイアウトを土台に、空間の中で過度に目立つことなく、必要な情報ははっきりと読み取れるように構成しました。空間ごとの素材や表現方法も、その性格に合わせてそれぞれ異なる形を採用しました。CITY LABは、ガラスブロックの壁と調和するメタルプレートサインで、研究と診断の空間の透明で実験的なイメージを強調し、AMORE BESPOKE FACTORYは、ガラス面に直接タイポを施すことで、調製過程の開放感と信頼感を表現しました。ヘラ カスタムマッチのようなサービスゾーンは、ブランドの象徴性と専門性がはっきりと読み取れるようにし、方向誘導のサインやルーム表記は、空間全体の流れを妨げることなく、直感的に案内できるよう整えました。
多言語運営まで見据えたPOP体系

価格表、NEW/BEST、購入案内POP、商品説明POP、サービス説明POP、サービス・店舗案内スタンドPOPまで、タイプを分類し、サイズや形式、素材を体系化して、空間全体で一貫した使い方ができるようにしました。特にPOPは全体をメタル素材で計画することで、すっきりとした印象を保ち、印刷物は交換と取り扱いが容易になるよう構成しました。また、韓国語、英語、日本語、中国語の4言語体系を採用することで、グローバルなお客さまがショッピングの過程で必要な情報を、よりスムーズに理解していただけるようにしました。
パッケージ/ショッピングバッグ
パッケージとショッピングバッグも、単なる消耗品ではなく、ブランド体験の最後に残る印象を形づくる要素として捉えました。

販売用リユーザブルバッグは、従来のクラフト紙のショッピングバッグのデザインを発展させたデザインに整え、アモーレ龍山ならではのアイデンティティを保つと同時に、ウィットを加え、より実用的な使用体験へとつながるようにしました。透明なメッシュ素材のショッパーバッグは、中の商品が自然に見えるようにしながらも、軽くて持ちやすく仕上げて、使いやすくしました。

また、多様なギフトのニーズに応えられるよう、マチ付き袋、包装紙、ポジャギ(韓国の伝統的な包み布)包装など、複数の形態のパッケージバージョンを併せて開発しました。これは、単に商品を入れてお渡しするだけにとどまらず、購入の目的やシーンに応じて、より適した形で体験を選んでいただけるようにするためです。メッセージカードもまた、お客さまが多様なお好みやシーンに合わせて選べるよう、10種を超えるラインナップをご用意し、こうした構成も今後も継続的にアップデートしていく計画です。
一つの店舗リニューアルから、フラッグシップモデルの基準点へ
今回のリニューアルの目標は、単に新しい店舗をオープンすることにあったわけではありません。アモーレパシフィックのフラッグシップが、どのような形でブランドとお客さまをつなぐべきなのかについての基準を定めることの方が、より重要でした。ブランド・空間・VMD・グラフィック・サービスがバラバラに機能するのではなく、一つの方向のもとで有機的につながったとき、フラッグシップ空間はより強いメッセージと、より高い完成度を持てると考えたのです。アモーレ龍山のリニューアルは、こうした統合的な企画により、アモーレパシフィックの現在を映し出す空間であり、これからの新たなビューティー体験を提案していく空間として完成しました。
もっとも長く向き合ってきた問いは、「良い店舗をつくるのか、それともこれからアモーレが目指す方向を示す空間をつくるのか」でした。それに対する答えは明確でした。新しいアモーレ龍山は、単にうまくつくられた店舗ではなく、研究・カスタム・キュレーション・ギフト・交流が結びついた、アモーレパシフィック本社のHouse of New Beautyです。ふらりと立ち寄る空間ではなく、目的を持って訪れ、アモーレパシフィックの現在と未来を体験する空間。それが、私たちがつくりたかったアモーレ龍山のクリエイティブストーリーです。
Creators
Jeongwon Heo Creative Center
Restore Business Team Creative Center
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