人がいなければ、AI時代なんて何の意味があるのでしょうか #2
文
オ・スンウン アモーレパシフィック財団
Editor's note
アモーレパシフィック財団では、「学術研究」、特に人文学を通じて私たちの暮らしを改めて見つめ直すコンテンツを制作しています。よく見てみると、古くからの研究にも、今の暮らしと結びつけて考えられることがたくさんあります。自分自身や身の回りを見つめ直す人文学について、私がわかりやすくお伝えします。
#INTRO
コンテンツ制作者として、私は日頃から流行を把握するためにSNSをチェックしています。間違いなくトレンドを追うために見始めたはずなのに、いつの間にか本来の目的を忘れ、何時間もスクロールし続けてしまいます。リールに飽きるとショート動画へ、ショート動画に飽きるとまたリールへ。繰り返されるループの中で、ふと「今、自分は何をしているんだろう。」と思うのは、私だけではないはずです。特に、コメント欄を読んだり、SNSで目にする奇妙な光景を見たりすると、どっと疲れを感じることがあります。
人々はいつも些細なことで争い、十分に痩せているのに、さらに痩せようと施術を受け、信頼できる広告はますます少なくなる中で、誰かは広告収入で何千万ウォンも稼ぐ世の中。「人と比べず、自分のペースで生きなさい」と言われますが、SNSの中の誰かは「今までそれだけしかやってこなかったのか」と怒鳴りつけることもあります。
いったい、人々の本当の思いとは、何なのでしょうか。目まぐるしく移り変わるミームから見えてくる表面的な姿ではなく、その奥にある本当の大衆心理を把握する方法。その一つが「本」だと考えます。書店に行き、最近どんな本が出版され、売れているのか、売り場をざっと見渡してみてください。繰り返されるテーマや、どこか似た雰囲気を持つ本がいくつも見つかるはずです。そして、このようにして出版の動向から時代の姿が垣間見られるのは、1900年代初頭に遡っても決して例外ではありません。
1920年代の「女性」をタイトルに掲げた本

出典:ユ・ソクファン(2022)、女性と本:「女性」をタイトルに掲げた本から見る植民地時代の書籍市場におけるジェンダー力学、民族文化研究
例えば、1907年から1945年の間に出版された本のうち、タイトルに「女性」に関連するキーワードが入った本の数を見てみると、他の時期に比べて1920年代に際立って多いことがわかります。当時、女性に対する社会的な認識が変化するような出来事があったと推測できます。実際に、1920年代半ばには、女性の中等教育制度が改善され始めました。1924年まで7校にすぎなかった女子高等普通学校は15校に増え、女性の留学生の数も、1910年代には34人にすぎなかったのが、1926年には200人台にまで増えたという記録があります。

女性雑誌『新女性』、出典:韓国民族文化大百科事典
各出版社や出版団体では、このような新たな読者層の出現を見逃さず、代表例として、開闢社は女性雑誌『婦人』を『新女性』へと改編しました。使われている表現を見てみると、それまで女性を「家庭内の存在」として捉えていた状況から変化し、家の外で活動する女性や、未婚の若い女性を指す言葉が主流になりました。もちろん、女性教育における不平等は依然として残っていましたが、当時の時代的な変化を、書籍市場を通しても読み取ることができるのです。
1930年代の「女性」をタイトルに掲げた本
しかし、こうした変化も束の間、1930年代末になると、本の中の女性は再び家庭を担う存在として、母親や妻というイメージとして登場するようになります。第二次世界大戦によって各地で戦争が起こる中、戦地へ赴いた男性に代わって家庭を守り、国のために献身する女性、いわゆる「銃後婦人」の役割が強調されるようになりました。日本による植民地支配が続く中で、植民地の書籍市場への日本本土の影響も次第に強まり、それに伴って朝鮮語の書籍市場が縮小していったことも、1930年代をよく表す特徴の一つです。
2000年代のベストセラーは?
では、100年経った今はどうでしょうか。やはり、出版市場の動向を最もよく表しているのは、ベストセラーでしょう。「ベストセラーは時代を映す鏡だ」という言葉があるように、ベストセラーのランキングを見るだけでも、その時代がどのようなものだったのかを読み取ることができます。左右どちらを向いても興味深い本がずらりと並んでいた「2026ソウル国際ブックフェア」で、こうしたベストセラーの動向を時代ごとにまとめ、一目でわかるように紹介しているブースがありました。それが、「人は本をつくり、本は人をつくる」をモットーとする教保文庫のブースでした。

成功と処世術、そして感性の時代だった1990年代。出典:筆者撮影

「パンデミックの癒しとノーベル文学賞の時代」だった2020年代。出典:筆者撮影
誰もが知るように、2020年は新型コロナウイルスの影響で、家で過ごす時間が増え、全般的な社会の雰囲気が沈滞していました。そのため、癒しのエッセイが人気を集めそうに思えますが、むしろ、数年間好調だった感性エッセイは勢いが鈍り、『お金の性質』や『ハーバードキッズ 上位1%の秘密』などの経済・経営関連の本がベストセラーにランクインしました。急に増えた余裕の時間に多くの人が憂うつな気分にとらわれるより、現実的に資産を増やすことや、自分自身の能力を高めることに関心を向けていたことがうかがえます。

(左) 2024年ベストセラーとなった『少年が来る』 (右) 2025年ベストセラーとなった『ホンモノ』
続いて、2024年には、作家ハン・ガンのノーベル文学賞受賞により大きな人気を集めた『少年が来る』が、2025年のベストセラーとしては、「Netflixなんて見てる場合じゃない、ソン・ヘナの本を読めばいいのに」という俳優パク・ジョンミンの推薦コメントで話題になった『ホンモノ』が展示されていました。「テキストヒップ」ブームにより小説が好調だった昨年1年間を、一冊の本に凝縮したかのようでした。隠れた名作を選んで読むよりも、有名な本を買って、他人に見せびらかそうという心理が働いているようにも思えますし。とはいえ、それの何がいけないでしょう。理由は何であれ、本に関心を持つ人が増えることは、社会にとって紛れもなく前向きな変化をもたらしているはずです。それは問いを持つ人が増えるということを意味しますから。
2026ソウル国際ブックフェアを振り返って
私が考える、最近の韓国社会のキーワードは「自分らしく生きる」なのではないかと思います。「他人の基準に合わせず、自分らしさを見つけよう」「人それぞれのペースがある」「SNSで目にする他人の暮らしは、幸せな部分だけを切り取ったものだ」――こうした言葉を、何度となく耳にしています。いっそのこと、ただ流れに身を任せて生きていたほうが楽なのかもしれませんが、「自分らしく生きなさい」と言われてしまうと、人はそれぞれに、自分らしく生きるための自分なりの努力をするようになります。ここ2〜3年の間に、『超訳ブッダの言葉』『超人(übermensch)』『シッダールタ』といった本が流行しているのも、こうした理由があるからではないかと思います。

出典:筆者撮影(2026ソウル国際ブックフェア)
だから、若者たちはMBTI診断をし、ChatGPTで四柱推命を見てもらったり、瞑想をしたり、仏教の教えに夢中になるようです。でも、自分らしさを短期的に見つけるのは、あまりにも難しい課題です。しかも、自分らしさというものは、時が経つにつれて、自分の中でも変わっていきます。誰と出会い、どのような状況に置かれるかによって、私たちは少しずつ変化し、成長していくからです。「5年前は情熱的だったのに、いつの間にこんなに無気力になってしまったんだろう」と感じる時期が来ることもあります。そうした自然な流れの中で、自分をたった一つの言葉で定義するのは、とても難しいことのように思います。

出典:筆者撮影(2026ソウル国際ブックフェア)
結局のところ、自分らしさとは、自分が惹かれるものや、好きだったものの集まりなのだと思います。(もちろん、これは私の考える定義です。)マドレーヌが好きな人はマドレーヌをテーマに、ラフに描いた絵が好きな人は、ゆるいタッチのイラストで本を出します。しばらくギターに夢中になっていた人なら、自分がギターを習い始めた頃の話を語ることもあります。だからといって、彼らは一生マドレーヌだけを食べ、ギターだけを弾いて暮らすのでしょうか。そんなことはないでしょう。ギターを弾いていて、水泳を習うこともあるし、いつの間にか1か月に1回しかマドレーヌを食べないこともあるでしょう。それでも、それらを好きだったという事実、そのときに感じた気持ち、そこから呼び起こされる記憶は、その人ならではの特徴になり、そうしたものが一つずつ積み重なって、自分らしさになるのだと思います。
例えば、私は電子書籍よりも紙の本が好きです。手に持ったときの感触も好きですし、一枚ずつページをめくるという物理的な行為がもたらす、「自分が本を読んでいるという感覚」も好きです。それに、紙の本を手にしている間だけは、電子機器から離れられることもいいところです。だから、書店で紙の本が積み重なっている匂いを嗅ぐと、心が落ち着くのです。だからといって、私が紙に関わる仕事をしているわけではありません。私は、手で触れられないオンラインコンテンツを制作しています。私の好きな他の部分が私をコンテンツ制作者にしたのです。このように、自分らしさとは本来、極めて多彩なスペクトラムのようなものなのに、最近の人々は、たった一つの言葉で収まる自分らしさばかりを探しているようで、少し残念にも思います。

出典:筆者撮影(2026ソウル国際ブックフェアテーマ展)
人々の心理を最もよく表す3つの言葉だと思い、写真に収めました。過去に比べて、「意志」さえあれば、自分の好きなごく小さなことからでも成功できると世の中は語りかけます。そして、AIが人間をもっと「自由」にしてくれるのではないかという期待がありますが、たった3日も経てば流行が変わり、来年には世の中がどんな姿になっているのかさえ、なかなか想像できないとても「気まぐれ」な時代です。「問いかける人間」という意味を込めた、2026年ソウル国際ブックフェアのテーマ「人間宣言―ホモ・ドゥドゥリ」のように、完璧でなくても、その不完全さを人間らしさとして受け入れ、問いかけ続ける人が増えていくことを願っています。
*本コラムの内容は、アモーレパシフィック財団のInstagramでも動画でご覧いただけます。
*本コラムの一部は、アモーレパシフィック財団の研究支援を受けて刊行された、ユ・ソクファン(2022)『女性と本:「女性」をタイトルに掲げた本から見る植民地時代の書籍市場におけるジェンダー力学』を参考に執筆されました。
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