成分で見るアモーレパシフィックの研究ストーリー #3
文
パク・ジョンヒ 研究インフラ運営Lab
Editor’s Note
研究員として入社したばかりの頃、私のメンターは時間があるたびに原料を肌に塗ってみるようにとおっしゃっていました。配合量の少ない原料であっても、製品の中ではその使用感がきちんと感じられるとおっしゃって、原料をたくさん塗ってみて、その使用感を覚えておくことが、良い製品づくりに役立つとお話しされていました。私たちが料理を食べるとき、使われている食材の味を、はっきりと、あるいはほんのわずかに感じ取るのと同じです。そこで、時間を見つけては原料を塗っていたあの頃を思い出しながら、より多くの人と共有したい原料研究についてのお話をしたいと思います。
#INTRO
自社で開発したブルーPDRN技術が昨年、韓国海洋水産部の新技術認証を取得したのに続き、最近ではグリーン技術認証も取得しました。今回は、その審査の過程で投げかけられた意義深い質問についてお話ししたいと思います。


ブルーPDRNは従来のPDRNと何が違うのか?
製品開発研究員だった私は、15年前から技術コミュニケーションに携わっています。技術コミュニケーションの重要な役割の一つは、わが社の研究技術が政府機関の技術賞や国の認証を取得できるように資料を準備し、技術の独自性や価値を客観的に立証することです。いくら優れた技術でも研究室の中でだけ認められては、その価値を十分に伝えることが困難です。外部の信頼性の高い機関からの客観的な検証を経ることで、より多くの人々に技術の価値や独自性を説明することができます。
政府の技術認証を取得するのは、思った以上に厳しいものです。PDRNはすでに医薬品や化粧品の分野で広く知られている成分であるため、審査委員を説得するうえで重要だったのは、単に「PDRNが優れている」ということではなく、「わが社のPDRNは何が違うのか」でした。そのために、数年間蓄積してきた研究データや論文、特許を通じて技術の独自性を示すとともに、研究成果が実際に製品として実用化され、生産されているということを現地審査を通じて検証していただきました。
技術賞の申請資料を準備している間、私はある問いを何度も自分自身に投げかけました。そして、審査の過程で最も多く受けた質問もまさに同じものでした。「そもそもブルーPDRNは従来のPDRNと何が違うのか?」 ――今回は韓国トップクラスの技術専門家たちを説得した、まさにその答えをお話しようと思います。ブルーPDRNを従来のPDRNと分ける特徴とは何なのか。そして、その独自性がどのように新技術の認証とグリーン技術の認証につながったのか一つずつご紹介いたします。
PDRNは、なぜ注目される成分となったのか?

<出典:AIで生成した画像>
まず、PDRNとは何なのかからお話しします。最近、PDRNは皮膚科の施術や化粧品で最もよく耳にする成分の一つとなりました。一般には、「サーモンDNA成分」として知られていますが、正確に言うと、 PDRN(Polydeoxyribonucleotide)は、一定の長さのDNAの断片を意味します。
このDNAの断片は、肌が自ら回復するように促し、ダメージを受けた肌環境を改善することから、古くから再生医学分野で研究されてきました。皮膚科での施術後の肌の回復を促すための目的で用いられたことをきっかけに広く知られるようになり、最近は化粧品にも取り入れられています。

興味深いのは、私たちが化粧品に適したPDRNについて悩み、独自技術を開発して政府主導の新技術認証を取得した時期と、ほぼ同じ時期にPDRNが消費者からも注目される成分の一つとなった点です。皮膚科から始まったPDRNは今や美容液、クリーム、シートマスクなど、様々な化粧品に広がり、最近は消費者の関心も急速に高まっています。美容トレンド分析企業のSPATEは、PDRN配合の美容液への関心がわずか1年で10倍以上に増加したと分析しています。しかし、アモーレパシフィックがブルーPDRNを研究し始めたのは、PDRNが一つのトレンドとなる、はるか前でした。
皮膚科での体験を化粧品で実現できるだろうか?
当時、研究チームは一つの変化に注目しました。皮膚科の施術は急速に進化しており、施術を体験したお客様の期待もますます高くなっていました。これを受けて私たち研究員の関心は、「皮膚科で継続的にケアを受けるお客様は、やがて化粧品を求めなくなるだろうか」「皮膚科で体験した満足感を化粧品でも提供できるだろうか」でした。皮膚科の施術に匹敵する肌の変化を化粧品で実現することを目標とし、その有力な候補となったのがPDRNでした。私たちは、単に新しい原料を開発することだけにとどまりたくはありませんでした。そのため、研究の初期段階から一つの原則を立てました。皮膚科レベルの体験を化粧品で実現することが目標であるならば、最終的には実際の皮膚科での施術と直接比較して検証しなければならない、ということでした。

<急速に身近になっている皮膚科の施術、出典:ゲッティイメージズ>
しかし、従来のPDRNは、化粧品に使用するにも、期待するだけの効果を出すにも、いくつかの限界がありました。ほとんどのPDRNは、サーモンやマスなどの動物由来原料から得られるため、生産性や持続可能性に限界があり、また、分子サイズが大きいため、肌へ十分に届けにくいことも、以前から課題として指摘されてきました。実際、近年PDRN配合化粧品が注目を集める一方で、「化粧品として肌に塗布したPDRNは、どの程度肌に届けられるのか」についての議論も続いています。
私たちアモーレパシフィックの研究員が解決したかったのも、まさにこの点でした。「化粧品により適したPDRNをつくることができるのか。」――その答えとして生まれたのが、微細藻類のクロレラから得られる ブルーPDRNです。ブルーPDRNは動物性原料の代わりに微細藻類を用いて持続可能性を高めただけでなく、 高濃度・高純度の低分子PDRNを安定的に生産できるよう設計されました。特に、従来のPDRNよりはるかに小さなサイズにすることで、肌への浸透性を向上させた点が、最大の差別化ポイントです。
優れた成分を肌へ、浸透技術を極める
優れた成分、優れた原料だけでよい化粧品になるわけではありません。前回の「レチノール」のコラムでもお話ししたように、優れた原料を肌へきちんと届けて肌の内側からその効果を発揮できるようにすることが重要です。いくら優れたPDRNだとしても、肌の奥まで十分届けることができなければ、期待する効果を得ることは難しいからです。
だから、アモーレパシフィックの研究員たちは、ブルーPDRNをつくるだけで満足しませんでした。Lipo3EXという浸透技術を用いて肌の奥まで届けられるように設計しました。Lipo3EXは、ブルーPDRNを安定的に包み込み、肌へ効果的に浸透させるよう設計されたリポソーム技術で、優れた成分が肌の内側でその役割を果たすことができるよう促す、もう一つのコア技術です。
皮膚科の施術と実際に比較、臨床試験で確かめる
こうしてつくられた化粧品は、本当に私たちが最初に考えていたように、皮膚科レベルの満足感を提供できたのでしょうか。研究の初期段階から立てた目標を検証するために、皮膚科の施術と実際に比較する臨床試験を通じて確認してみました。
皮膚科の施術と化粧品を実際に比較する臨床試験はこれまで経験がなく、私たちの臨床研究員にとっても新たな挑戦でした。皮膚科で施術を受けた場合と、ブルーPDRNとヒアルロン酸をLipo3EXとともに配合した化粧品を使用した場合を比較した結果、4週間後、肌バリア機能とハリにおいて同程度の改善が認められました。さらに、ボリューム、毛穴、保湿力においては、より高い改善効果が確認されました。

<皮膚科の施術を受けたときと、ブルーPDRNとヒアルロン酸をLipo3EXとともに配合した化粧品を使用したときを比較した結果>
実は、研究を始めた当初は、私たち自身もどのような結果が出るのか確信を持てずにいました。内心では期待していたものの、臨床試験の結果を確認したときは、原料を開発した研究員、浸透技術を開発した研究員、処方を開発した研究員、そして臨床試験を設計し実施した研究員の誰もが、かなり驚いたそうです。皮膚科の施術からヒントを得て始まった研究が、限界に挑んできた革新的な技術と結びつき、実際の肌の変化につながる可能性を示したのです。
誰よりも先に納得したのは、むしろ私自身でした。
技術認証の資料を準備する中で、私は数多くの論文や実験結果、臨床データを改めて読み返しました。初めは、審査委員を説得するために始めたことでした。ですが、データを一つひとつまとめていくうちに、研究チームがなぜこの技術に長い歳月を費やしてきたのか、理解できるようになりました。そして、誰よりも先に納得したのは、むしろ私自身だったのです。
「これだけのデータと結果があれば、審査委員を十分に説得できるだろう。」――製品を開発した研究員ではなく、技術を客観的に検証し、その価値を説明する立場にいる私自身がそう確信できたことは、私にとって非常に大きな意味がありました。だからこそ、今回のグリーン技術認証の結果を、いっそう誇らしく感じたのかもしれません。ブルーPDRNは、単に新しい成分を一つ生み出した研究ではなく、お客様に皮膚科レベルの体験を化粧品で届けるために、長い歳月をかけて問い続けてきた研究の結果だったからです。
審査委員は、「ブルーPDRNは何が違うのですか」と尋ねました。その質問に私は、こう答えることができました。 「ブルーPDRNは、単に動物性PDRNを植物性に変えた技術ではありません。皮膚科レベルの体験を化粧品で実現するために、原料と浸透技術、そして臨床試験による検証まで一つの流れの中で完成させた技術です。」
#OUTRO
技術は特許を取得するために存在するものでも、認証を取得するために存在するものではありません。突き詰めれば、お客様の肌を少しでも健やかにするために存在します。ブルーPDRNもまた、「どのようにすれば、皮膚科で感じた満足感を化粧品でお届けすることができるだろうか」という問いから始まりました。これからもアモーレパシフィックの素晴らしい研究は、いつでも素晴らしい問いかけから始まるのだと、私は信じています。
アモーレパシフィックは科学で語ります。
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