私は私だから美しい
自分らしい美しさで世の中にインスピレーションを与える人々に出会う「ニュービューティーアイコン」。今回の主人公は、歌手のインスニさんです。インスニさんは48年という長い歳月にわたり、ひたすら自分自身であり続けてきた韓国を代表するディーバです。現在はすばらしいステージを彩る歌手として、また多文化家庭の子どもたちのためのヘミル学校の理事長として、母として、作家として、さまざまな役割を担っています。そして毎日、一瞬一瞬、「自分として生きていく」ことを心に誓っています。「激しい雨風も雪も、そして照りつける日差しも、進んで受け止めながら」自らを育て上げてきた、私たちの時代の最高のディーバ。ポジティブな心で長い間自分らしさを失わず、ほかの誰でもない自分だからこそ美しいと語るインスニさんに、NEW BEAUTYについてお話を伺いました。
「 」内の一節は、インスニさんが出版した絵本『ある旅』から引用しました。
ニュービューティーを人生そのもので体現してきたアイコンだと感じます。今回ニュービューティーアイコンとしてお会いすることになりましたが、最初はどう思われましたか。
「ついに来るべきものが来たな」と思いました。ハハ(笑)。実は「私がニュービューティーアイコン?」と最初は少し不思議に思ったんですが、すぐにありがたいことだと思いました。ニュービューティーって、自分らしい美しさのことなんですよね?自分を認めて自分らしく生きることは、私がいちばん得意なことなので、それに気づいてもらえたことに感謝しました。ニュービューティーにふさわしい人だと言っていただいて、なんだか少し誇らしい気持ちにもなりました。うれしかったです。
自分らしく生きることがいちばん得意だなんて。実際、それは簡単なことではないですよね。多くの人が他人の基準に自分の人生を合わせてしまいがちですが、自分らしく生きるためのコツを教えてください。
今言ったように、自分自身を認めればいいんです。私は華やかに着飾ってステージに上がったときだけでなく、普段の自分も美しいと思っています。ぼさぼさの姿も、着飾った姿も、全部私じゃないですか。ものすごく立派な人間というわけではないけれど、だからといって恥ずかしいとも思いません。私はベストを尽くして一生懸命生きてきたし、これからも一生懸命やっていく。だから、年齢を重ねるにつれて変わっていく自分の姿も気になりません。自分をありのままに認めれば、自分のすべてが美しく見えるはずです。
人と比べることには意味がありません。比較というのは条件が同じでなければ成り立たないのに、みんな違うじゃないですか。世の中に、私とまったく同じ人なんていませんよね。自分が特別に優れているから美しいのではなく、私たちは誰もが唯一無二の存在だからこそ、美しいんだと思います。自分をきちんと認めると、人と接するときにも自信を持って堂々としていられるようになります。私たちはみんな違うのだから、自分らしく生きなくちゃ。

違うから、そして違うからこそ、誰もが美しいということですね。なんだか励まされます。
優れている人、有名な人、すごい人だって、私には関係ありません。私ではないんだから。今の自分のままで、どうやって人生を素敵に生きていくか、それだけを考えればいいんです。「あの人みたいになろう」と思ったら、その時点でその人の下にいることになるんですよ。どうして自分で自分に順位をつけるんですか。自分の道を行かなきゃ。自分の道では、自分が1位なんですから。もちろん、ときには足りないところが見えることもあります。でも、生まれ持ったものについて考え悩んでも仕方ないでしょう。時間がもったいないだけです。それなら、自分が持っているもので、どうやって自分を素敵に引き上げるかを工夫したほうがいい。結局、美しさはポジティブな力から生まれるものだと思います。
ガールズグループ活動、ボディビル大会、サンティアゴ巡礼路の踏破、高卒認定試験と、分野を問わず挑戦し続けていますね。インスニさんにとって、挑戦とはどんな意味を持つのでしょうか?挑戦が必ずしも成功に結びつくわけではありませんよね。失敗を恐れて挑戦しない人もいます。
挑戦は、死ぬまで続けるべきもの、続けずにはいられないもの、とでもいいましょうか。私は、自分で直接経験して挑戦してみないと気が済まない人間なんです。私が娘やヘミル学校の生徒たちによく言うことの一つが、「偽物の恐怖にだまされないで」ということです。本物の恐怖というのは、一度経験した後にやってくる恐怖です。険しい山に登って、すごく怖い思いをした経験があれば、次はその恐怖を思い出すでしょう。そうなれば、本当に怖くなるはずです。でも、私たちが抱えている恐怖のほとんどは、勝手に怖いだろうと思い込んで決めつけている恐怖なんです。やってもいないのに、どうしてわかるんですか。いざやってみると大したことではないかもしれないし、大したことではない場合のほうがずっと多いのに、怖くて挑戦しないんですよね。私はやってみたら、どれも意外とできました。何でも、まずは楽しく始めてみてください。やってみてダメなら、そのときにあきらめても遅くはありませんから。
インスニさんならではの歌声が持つ力は、そうした挑戦や経験によって育まれてきたのではないかと思います。「ガチョウの夢」「父」「友よ」――どんな曲も、インスニさんが歌うと、違った感動が押し寄せてきます。
やはり、これまで経験してきたことがにじみ出るんでしょうね。歌い手によって歌が違って聴こえるのは、そういう理由からだと思います。年を重ねて感じるのは、経験が自分をうまく熟成させてくれるということです。若い頃は音程を一つひとつ正確に取って歌っていたとすれば、今は語りかけるようにふっと声を出すだけでも、メッセージが伝わるんです。自分だけの経験が、自分だけの表現になってくれたんですね。

ヘミル学校の子どもたちにも、こうしたお話をたくさんしてあげているんですか。
していません。ハハ(笑)。中学生になったばかりの子どもたちに話して聞かせても、わかるでしょうかね。ただ、私が一生懸命生きている姿、ポジティブでよく笑い、よく喜ぶ姿を見せるようにしています。それを見ていれば、自然とついてくるんじゃないかと思っています。子どもは親の背中を見て育つといいますよね。娘を育てたときもそうでしたが、押しつけたり教え込んだりするよりも、ただ自分の生き方で見せたいと思っているんです。ヘミル学校も、私と同じような悩みを抱える10代の子たちと一緒に歩んでいかなきゃ、という思いから始めました。
一緒に歩む。子どもたちにとって、インスニさんという存在はとても安心できて、心強い存在なのでしょうね。
そうだといいですね。私は幼い頃、アイデンティティについて本当にたくさん悩みました。母や祖母、ご近所の人たちなど、私を愛してくれる人はたくさんいたのに、どうしても解けないわだかまりがあったんです。私は誰なんだろう?私は韓国人なのかな?アメリカ人なのかな?私はどの世界になじめるんだろう?こうした悩みで、かなり長い間苦しみました。だから、子どもたちの気持ちがよくわかるんです。それは親にもわからないことなんですよ。親にはそれぞれの国がありますから。アイデンティティについての悩みは、親よりも私のほうがよくわかるんです。だからといって方法を教えるわけではなく、そばにいてあげるんです。子どもたちが自然と気づきを得られるように。もっと大変な時代をくぐり抜けてきた私の背中を見て、勇気と自信を持ってくれたらと思っています。
インスニさんには、そういう大人がいなかったのではないかと思いますが、どうやって乗り越えたのですか。音楽が支えになったのでしょうか。
いいえ。私はそんなに哲学的な人間じゃないんです。音楽は職業として選んだものでした。生きていくために、単純にそれだけの理由でした。ただ、歩んでいく中で、音楽が私に価値を与えてくれました。それに、私を愛してくれる人たちとも出会わせてくれましたね。私は、ステージの上の自分とステージの外の自分を完全に切り分けて生きています。そうすることで、一人の人間「キム・インスン」としてたくさんのことを経験できるんです。ステージの外では、セインのお母さんとして、近所のおばさんとして平凡に暮らしています。バスや電車に乗って、歩いて移動します。スーパーで買い物をして、銭湯でおしゃべりもします。その平凡な日常の中で蓄えたエネルギーと経験を、ステージの上で歌として表現しているんです。

完全な自由を味わう時間を過ごされているのですね。
そうしてこそ、本当の自分に出会えますから。美しさと自由は、切り離せないものだと思っています。2023年に、サンティアゴ巡礼路800kmを36日かけて歩き通しました。初めて家族と離れて一人で行った旅だったんですが、そのとき本当の自由を感じました。その頃、娘が交通事故に遭って、巡礼の旅を取りやめようとしたんですが、(ありがたいことに)娘が、自分は回復しているから計画を延期せずに行ってきて、と言ってくれたんです。落ち着かない気持ちで出発しましたが、歩いているうちに、いつの間にか心が軽くなっていました。
その自由の中で、自分という存在をより強く感じられたのではないでしょうか。自由の中で見つけたキム・インスンは、どんな人でしたか。
ものすごい回復力を持った人。娘が「行っておいで」と言ってくれたとはいえ、けがをした娘を置いていくのは、なかなか足が進みませんでした。最初は泣きながら歩いていました。歩いていて聖堂を見かけるたびに中に入って、ろうそくを灯して祈って。でもあるとき、私が泣いたところで解決するわけじゃないと思ったんです。それなら、もっと強くなろう。もっとポジティブになって、もっと笑おう。娘に明るい姿で勇気を与えよう。そう心に決めました。それからは、笑いながらその時間を一瞬も逃さず、存分に楽しみました。

結局、ポジティブな力を改めて感じたということですね。
はい。サンティアゴ巡礼路に行くとき、何かを手放して帰ってくるとか、何かを置いてくるとか言うじゃないですか。でも私は何も考えずに、ただきつくて、楽しかったんです。帰ってきてみると、胸に感謝だけが残っていました。生きていることへの感謝、いい人たちと一緒に歩けたことへの感謝。新しい経験への感謝。40日近く仕事をせずに旅ができたことへの感謝。私がいない間に、たくましく回復してくれた娘への感謝。
もうすぐ新曲がリリースされるそうですね。感謝しながら一つひとつ積み重ねてきた経験が、どんなふうに歌声に乗るのか楽しみです。新曲について少しお話しください。
今回の新曲も、新たな挑戦であり経験の一つになると思います。これまでやったことのないスタイルの曲なんです。ダンスでもバラードでもない、肩の力を抜いたロックバラードのような曲です。キーポイントは歌詞です。一度聴いたら忘れられない、遊び心がありながらも、ふと人生について考えさせてくれる、とても面白い歌詞なので、期待していただいていいと思います。気候のいい5月にお届けする予定で、一生懸命準備していますので、ぜひ楽しみにしていてください。
どんな歌詞なのか気になりますね。最後に、美しさを守り続けていくための今後の計画についてお聞きして締めくくりたいと思います。
自分らしい美しさを守るための今後の計画は、よく食べて、よく寝ること!健やかな体に健やかな心が宿るといいますよね。私のトレードマークである好奇心とポジティブマインドがなくならないように、心と体を整えていくつもりです。私の歩みにいつも拍手を送ってくださる皆さんに感謝しながら、ほかの誰でもないインスニとして、もっと一生懸命生きていきます。違うからこそもっと美しい皆さん、私がそばで一緒に歩いていきますね。楽しく、わくわくしながら、自分らしい美しさを見つけてみてください。

「ニュービューティーアイコン」では、世の中にインスピレーションを与える人々に出会い、それぞれの人生から見つけ出した「自分らしい美しさ」について聞きます。
コンテンツ制作 カヤメディア
企画総括 アモーレパシフィックコミュニケーションチーム
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