天丼専門店「山丼(サンドン)」のオーナーチョン・ドヨンさんに会う - AMOREPACIFIC STORIES
#漢江大路100
2025.12.22
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天丼専門店「山丼(サンドン)」のオーナーチョン・ドヨンさんに会う

一杯の満足感

アモーレパシフィックの向かい側の新龍山(シンヨンサン)駅すぐの路地裏にある小さな天丼屋「山丼(サンドン)」は、11時のオープン以降、ランチとディナーの時間になると長い行列ができる人気店だ。引き戸を開けて入ると、コの字型の広いカウンター席が用意されている。慌ただしい外の世界から完璧に切り離された、あたたかくて居心地のよい雰囲気は山丼の大きな魅力だ。山丼のオーナーのチョン・ドヨンは、山丼が漢江大路(ハンガンデロ)の人々にとって、疲れたり、つらいことがあったりしたときに、気持ちをリセットして帰れる小さな秘密のアジトのような場所であってほしいと願っている。そのせいだろうか。名前も知らない人たちと山丼のカウンター席に並んで座り、「サクッ」と香ばしい天ぷらを頬張っていると、お互いに応援の花火を打ち上げ合っているような気分になる。頑張れよ、残りの一日も元気に過ごそう、と。

 

 

 

 

 

簡単な自己紹介をお願いします。

こんにちは。山丼を営んでいるチョン・ドヨンと申します。「山丼」は2021年6月にオープンし、半年前には龍理団(ヨンリダン)通りの路地に、もう少しカジュアルな和食バー「テンクラ」もオープンしました。どちらも私の店ですので、ぜひお立ちよりください。

 

 

2021年のオープンだと、コロナ禍の時期と重なりますね。大変ではなかったですか。

天丼は一人でも食べやすいメニューじゃないですか。当時、アクリル板の仕切りを設置していたのですが、かえって安全だと考えて来てくださったようです。思っていたよりも多くの方に来ていただきました。

 

 

見事なメニュー選定ですね。天丼屋をオープンされた理由は何だったのでしょうか。

もともと洋食を学んでいましたが、日本の食文化への好奇心がありました。良い機会に恵まれて和食店の一番下っ端として働くことになったのですが、ちょうどその頃、店の新メニューとして天丼が出たばかりでした。ある日、オーダーミスでキッチンに戻ってきた天丼があって、先輩たちが捨てろと渡してくれたんです。そのまま捨てるのはもったいなくて、皿洗いの前にこっそり食べたのですが、衝撃的においしかったんです。実は私はクッパ派で、天丼はちょっと脂っこいだろうという偏見があったんですよ。でも全然そんなことはなかった。その瞬間、天丼を一番うまくつくれるようになりたいという夢ができました。店を出すときにレッドオーシャンだと心配してくださる方もいましたが、私は同時にブルーオーシャンでもあると思っていました。自分なりに生み出した自分だけの天丼は、どこにもないはずですから。

 

 

 

 

 

一目惚れですね。天丼のどんなところが魅力的だと思われますか。

衣で変化を出すこともできるし、素材でも変化をつけられるところですね。どんな素材をどう揚げるかによって、味がさまざまに変化するんです。少し前に新しくオープンしたカジュアルな居酒屋コンセプトの「テンクラ」にも天丼メニューがありますが、山丼の天丼とは味が違うんです。山丼は食事としてもたれないように衣が少しサクッと軽く、テンクラは酒のつまみとしても食べやすく、より和食らしさを出して衣を少しやわらかくしています。こういう微妙な違いが面白いんですよ。お客様も飽きずに楽しんでいただけますし。

 

 

最初は洋食を学ばれたということですが、和食に入られた理由は何でしたか。

私の夢は、いずれ年をとってからステーキハウスを開くことだったんです。それで西洋圏へワーキングホリデーに行こうと計画していました。本場で学んでこようと思って。ところが両親の反対がとても強くて。仕方なく自分で稼いで行くしかないと思い、たまたま働きに行ったのが和食店で、そこで運命のメニューに出会ったわけです。和食店で働きながら、同じ東洋文化圏だけれど馴染みのない日本の食文化が興味深く感じられました。そこのシェフの方々に和食のことをたくさん教わりました。そうしているうちに、日本の食文化を韓国流にアレンジして紹介することへと、夢が変わっていきましたね。

 

 

 

 

 

山丼に入ると日本に旅行に来たような気分になります。日本のどこか小さな食堂の風景のようです。

はい、そうなんです。そういうお言葉をよくいただきます。うちはお客様でいっぱいになると、狭くて横向きにならないと入れないほど狭いんですよ。だからといって、ぎゅうぎゅう詰めになる感じではなく、静かで落ち着いた雰囲気なんです。あえてそういう日本の小さな食堂の雰囲気を出そうとして演出した部分もあります。

 

 

インテリアもそれに合わせてつくられたんですね。

くつろげる静かな雰囲気を出すことを一番中心に置いてインテリアをデザインしました。個人的にもそういう静かで落ち着いた感じが好きですし。華やかというよりは、なんというか、ひっそりとした、自分だけが知っておきたいような雰囲気のお店であってほしかったんです。最初はあえて突き出し看板もつくらずに始めました。知る人ぞ知る老舗になってほしいという願いがあったんですよ。契約したときから外壁にひびが入っていたのですが、それもわざと隠しませんでした。自然な感じもいいし、それが自分たちだけの個性になるかもしれないと思って。

 

 

自分だけが知っておきたい隠れ家的なお店なのに、現実はいつも行列必至のお店ですね(笑)。「山丼」という名前にはどんな意味があるのでしょうか。

特別な意味があればいいのですが、正直にお話ししますね(笑)。もともとは龍山洞(ヨンサンドン)と名づけようとしていたのですが、あまりに直接的で、「龍(ヨン)」だけを外して「サンドン」に決めました。それに「ドン」は日本語の「丼(どん)」でもありますから、二重の意味も込めたんです。龍山で丼を一番おいしくお出しする店になってほしい、という願いを込めて名づけました。山丼!

 

 

それなら十分いい意味ですね。発音もしやすいですし。龍山洞から取って名前までつけられたわけですが、店の立地として漢江大路を選ばれた理由はありますか。

私が始めた頃はまだ龍理団通りができ始めた時期でした。ほんの少しずつ、本当に少しずつ注目され始めた頃で、この辺りで商売をしている方が勧めてくださったのと、交通の便もよかったんです。それに会社員の方と地域住民の商圏が一緒にある場所なので、いけそうだと思いました。実際に営業してみると、最近は観光客まで増えて、龍理団通りが有名になるにつれて一緒に盛り上がっていく雰囲気なので、いい選択だったと思います。

 

 

観光客というと外国人観光客も多いですか。

近くにエンタメ会社があるので業界の方々が来て召し上がることが多いのですが、口コミでいろんな国の方が訪ねてくださいます。日本のお客様もいらっしゃいますよ(笑)。

 

 

日本の方が何を召し上がるのか気になりますね。オーナーのおすすめメニューはありますか。

うちだけのシグネチャーである定番の天丼をおすすめするのですが、一番人気はサーモン天丼です。うちの定番の天丼の特徴は、揚げていない温泉卵を添えて召し上がっていただくことなんです。白身だけ火が通って黄身はほとんど生の状態の卵をご飯に混ぜて、天ぷらと一緒に召し上がっていただくと、なめらかで本当においしいんですよ。サーモン天丼は生サーモンと天ぷらの相性がよく、多くの方に召し上がっていただいているメニューです。サーモン丼と天丼の両方を味わいたい方のためのメニューでもあります。

 

 

チャムチャミョン(韓国式ちゃんぽん&チャジャンミョンのハーフメニュー)のような感じですか。

そんな感じだと思っていただければいいです。熟成させたサーモンのお刺身と、サクッとした天ぷらがとても相性がいいんです。チャムチャミョンのように、サーモン丼と天丼の間で悩まれるお客様を見ていて思いついたメニューなのですが、人気があります。

 

 

 

 

 

新しく始められた「テンクラ」もメニューは同じですか。

山丼とは違います。テンクラは7,900ウォンからというコスパのよい価格からスタートしていて、リーズナブルな価格で素早く提供され、会社員の方が気軽に一杯飲めるように構成しました。季節メニューにもいろいろ挑戦していて、冬を迎えてブリ丼、ブリのお刺身などもお出ししているところです。季節メニューは旬の食材でその都度変わっていく予定です。カジュアルに、気楽に来ていただいて、どの時間帯でも楽しんでいただければうれしいです。テンクラもぜひお越しください。

 

 

店を二つ運営するとなると、肩の荷が重いですね。仕事をしていてやり甲斐を感じるのはどのようなときですか。

うちが初期の頃は、本当に周辺の会社員の方だけが来てくださっていたんですよ。アモーレパシフィックの社員の皆さん、来てくださってありがとうございます(笑)。そうやって来てくださった方々が口コミを広めてくださいました。お客様からお客様へと伝わって噂になって、地域住民の方も来られるようになって、観光客も訪ねてくる場所になりました。日増しに新しい方々が知ってくださるときにやり甲斐を感じますし、たまに私がこの近くのカフェでコーヒーを飲んでいると、お客さん同士の会話が聞こえてくるじゃないですか。今日何食べた?って聞かれて、山丼に行ったよ、おいしかったよ、という話を耳にすると、そのとき本当にうれしいですね。

 

 

開業初期と今のお客様の変化以外に、何か変わったことはありますか。

うちは醤油をずっと熟成させて使っています。そのため時間が経つほど味の深みが変わっていくんですよ。私はおいしくなっていくと信じているのですが。時間の流れとともに醤油も熟成し、うちだけの色がより深くなっていっていると思います。

 

 

もう常連さんも多いでしょうね。

はい、よく来てくださる方がいらっしゃいます。だからといって、大げさに「いつもありがとうございます」なんて声をかけたりはしません。静かにくつろいでお食事していただける空間であってほしいので、あからさまには歓迎しませんが、ちゃんとわかっています。厨房に入って、あの方また来てくださったよって、スタッフ同士で喜んでいます(笑)。

 

 

 

 

 

山丼は定休日がないようですが、休みなしで働かれているのですか。

飲食業をされている方は、みなさんおわかりだと思いますが、休んでも気にかかることが多くて、なかなかちゃんと休めないんですよ。もう休むという感覚がどんなものか、よく思い出せないくらいです。朝9時半に出勤するのですが、朝は軽く運動して、事務仕事をして、飼っている猫と少し遊んで、出勤して一日の業務を始めます。ありがたいことに山丼とテンクラの9名のスタッフがそれぞれの役割を見事にこなしてくれているので、無理なくやれています。みんなに感謝しています。

 

 

いま一番大きな悩みは何ですか。

山丼が今年で5年目なので、拡張よりも足場を固める時期に来ています。ありがたいことにこれまで順調に成長できて、いまは山丼2.0、新しいバージョンの山丼を考えているところです。空間の制約や動線など、お客様がもう少し快適に楽しめるように再配置する時期が来たと思います。最初にお話しした、お客様一人ひとりに寄り添う小さくて素朴で居心地のよい雰囲気を、どうやってさらに引き上げられるかを考えているところです。5年が過ぎたので、これからの5年、10年を準備していかないといけません。

 

 

商売をしていて一番幸せな瞬間は?

飲食業の方はみなさん同じことをおっしゃると思いますが、器を洗うときに、きれいに空になった器が返ってきたときが一番幸せです。きれいに召し上がっていただいて、「ここは水もおいしい」とおっしゃる方を見ると、本当にうれしくなります。

 

 

この5年、漢江大路にいらっしゃって気づいた漢江大路ならではの魅力があるとしたら?

多様な方々が一緒にいることが一番の魅力です。平日は近くの会社員の方、夕方や週末は近隣の住民の方、皆さんに会える。そして、このあたりにはランドマークが多いじゃないですか。特に美術館から多様な飲食、建築など複合文化を楽しめるアモーレパシフィックという素晴らしい建物があるおかげで、この街がさらに盛り上がっていると思います。建物自体がとてもきれいじゃないですか。殺伐としたビル群の中にある宝石のようだなと思っています。そのおかげで、龍理団通りが盛り上がっていて、飲食業の腕のある方々がこの街に店を構えて、漢江大路をより魅力的な場所にしてくださっています。

 

 

最後に一言お願いします。

年末年始に多くの方が龍理団通りを訪れてくださると思います。漢江大路には美しいアモーレパシフィックもありますし、それぞれの色で味わいを出しているたくさんの小さなブランドがあります。山丼、テンクラとともに、漢江大路のおいしいお店をもっとご愛顧ください。

 

 

 

 

Information

龍山 山丼(サンドン)

  • 住所:ソウル市龍山区漢江大路39ギル5
  • 営業時間:11:00〜20:30(15:00〜17:00 中休み、年中無休)
  • メニュー:天丼定食、スペシャル天丼定食、サーモン天丼定食、サーモン丼定食など

 

龍山 テンクラ

  • 住所:ソウル市龍山区漢江大路15ギル 9
  • 営業時間:11:00〜20:20(16:00〜17:00 中休み、年中無休)
  • メニュー:天丼、牛丼、ブリ丼など

 

 

「漢江大路100」は、アモーレパシフィック周辺のオーナーの皆さまのインタビューをお届けします。
仕事への情熱と執念をもとに、自らの道を切り拓き、危機を乗り越えてきたオーナーの皆さまの物語を通じて、働くことの価値と意味を見いだしていきます。

 

Content Production KAYA MEDIA

Planning Amorepacific Communication Team

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