自分らしく、堂々と――自分らしさに美しさを
自分らしい美しさで世の中にインスピレーションを与える人々に出会う「ニュービューティーアイコン」。今回の主人公は、メイクアップアーティストのパク・テユンさんです。彼は「現場」という言葉が最も似合うトップメイクアップアーティスト。テーマや状況に寄り添いながらも美しさを失わない彼ならではのメイクは、後輩たちにインスピレーションを与えるリファレンスとなっています。メイクアップサバイバル番組『ジャスト・メイクアップ』に「ファーストマン」というニックネームで参加し、圧倒的な存在感を見せたパク・テユンさんは、自分自身を思いきり表現する堂々とした大胆さこそが、美しいメイクの最後の仕上げだと語ります。

AMOREPACIFIC STORIESの読者の皆さんに、自己紹介をお願いします。
こんにちは。メイクアップアーティストのパク・テユンです。『ジャスト・メイクアップ』に「ファーストマン」として参加しました。現在は、メイクアップアーティストのビューティーノウハウや、フュージョンダイニング「ソウリアン」のオーナーシェフとしてのレシピなどを発信するYouTubeチャンネル「サロン・ド・テユン」を運営しています。
スタジオメイクの第一人者でありながら、審査員ではなく一人の参加者として出演されました。後輩たちと競うことに、プレッシャーはありませんでしたか。
まったく。どうしてプレッシャーがあると思うんですか?(笑)正直に言うと、上位には入れるという確信があったので、コンテストそのものを楽しもうという気持ちで参加しました。何のプレッシャーもなく挑戦したんですが、いざ始まってみると「落ちるかもしれない」という思いがして少し緊張しましたね。それでも楽しかったです。
『ジャスト・メイクアップ』の最初のミッションで90年代メイクを披露し、モデルに「シャローム」という名前を付けていたのが印象的でした。普段からそうやってストーリーをつくるんですか。
状況によりますね。必ずしもそうではありません。あのミッションのときのモデルは、20歳になったばかりの子だったんです。私はテーマを90年代メイクにしたんですが、90年代に生まれもしなかったモデルと組むことになったわけです。それぞれの時代にはファッションとメイクの流れがあって、その空気感を少しはわかっていないと、表情にもうまく表れないんですよ。90年代は今とは違って、大げさで濃厚でした。それを短期間で染み込ませるために、90年代のモデルたちの写真を見せたんです。番組では流れませんでしたが、その子の目元が、90年代を代表するスーパーモデルのシャローム・ハーロウに似ていたんです。だから「シャローム」と呼んで、モデルと自分に暗示をかけたんですよ。
生き生きとしたやり方なので、仕上がりもより新鮮に見えました。
実は、セミファイナルの2つ目のミッションだったアーティストのコ・サンウさんの「カーマデーヌ(Kamadhenu)」をモチーフにした青い牛のメイクも、最初からまだらなコンセプトではなかったんです。ところが当日メイクをしていると、グラデーションがきれいに出ないんですよ。それなら、いっそわざともっとラフに表現しようと思って、現場でコンセプト全体を変えました。それがコンテストの醍醐味なんです。『ジャスト・メイクアップ』は、対抗心をむき出しにして競うというより、新しいものを表現する楽しさが大きかったですね。

『ジャスト・メイクアップ』「カーマデーヌ」ミッションより、Coupang Play提供
チームミッションで見せられた、穏やかで柔軟なリーダーシップも印象的でした。
チームのメンバーがとにかく優秀だったので、私がリーダーシップを発揮したというのはおこがましいですね。私は一緒に仕事をする場で、感情のせいで仕事の効率が落ちるような状況をできるだけつくらないようにしています。余計なエネルギーを使わなくて済むように、まずは雰囲気をリラックスした穏やかなものにすることに集中します。そうすることで、それぞれの個性や才能がよく発揮されるんです。長い間フリーランスとして働いてきて、さまざまな分野の人と協業しなければならないので、本当に大切な資質でもあると思います。
トップ10まで残られました。脱落したときは、どんな気持ちでしたか?
めちゃくちゃ悔しかったです。(笑)作家・チャ・インピョさんの小説に登場する人魚をイメージしたメイクをするミッションだったんですが、私から見ると、自分のモデルがいちばんきれいだったんですよ。人って、ときどきすごくはっきりわかる瞬間があるじゃないですか。「これは自分のが最高だ」と確信していたのに、望んでいた結果ではなかったので残念でした。

『ジャスト・メイクアップ』「人魚」ミッションより、Coupang Play提供
ご自身が優勝すると思っていましたか。
いいえ。自分は優勝させてもらえないだろうと思っていました。私が1位になったらドラマが生まれないじゃないですか。ありきたりになりすぎますし。賞金もあるのに、「やり尽くした人が出てきてそれをもらうのは、ちょっと……」という気後れもありました。最初から順位が目的ではなく、後輩たちと交流しながら、自分が持っているものをたくさん見せることに意味を置いていたんです。
では、本命の優勝候補は誰でしたか。
最後のミッションが何かによって違ったと思います。ミッションが正統派のメイクというより、新しい解釈力を見せるものだったので、パリの金手さんに少し有利だったと思いますし、もしKビューティーの真髄である女優メイクだったら、ソンテールさんに有利だったんじゃないでしょうか。

いちばん印象に残っているミッションは何ですか。
どのミッションもうまくいったので、逆に一つだけ思いどおりにいかなかったミッションが記憶に残っています。デザイナーのパク・ユンヒさんの70年代ムードを再解釈するセミファイナルのミッションで、つけまつげを作って付けたんですが、それがうまくなじまなかったんです。ほとんどの参加者はミッションのテーマに合ったルックをあらかじめ練習してくるんですが、私はそうしませんでした。普段からそういうやり方をしてこなかったからです。たとえば、広告撮影の現場に行くときに、事前に練習して行ったりはしないじゃないですか。現場で新しい気持ちになって、そこで生まれる高揚感のままやりたいんです。練習してきたものを機械的に繰り返すだけでは、面白くありませんから。ミッションの前日はぐっすり眠って、インスピレーションが湧くようなコンディションを整え、現場で感覚の赴くままにやりました。でも、あのミッションはまつげもあらかじめ作って、練習も少ししておくべきだったのに、前日まで海外のスケジュールがあったんです。なんだか合わない服を着ているようなミッションだったので、印象に残っています。
長年ビューティー学科の教授として、後進の育成にも力を注いでこられました。学生たちに最も強調してきたことは何ですか?メイクアップアーティストを夢見る読者へのアドバイスもお願いします。
「見る目」を強調してきました。見る目を養ってください。何がきれいなのかわかってこそ、きれいにつくることができます。ビューティー学科のカリキュラムにデッサンがなかったので、私の授業でデッサンをしたこともあります。純粋美術をやるとデッサンが基礎になるんですが、それがものを見る力を養うプロセスなんです。目を開けているからといって、すべてが見えているわけではありません。何となく見るのではなく、正確に見る力がなければ、美しさを表現することはできないんです。技術は繰り返せば上達しますが、きれいに見えないのは「見る目」がないからなんです。テクニックの前に、美しさを見抜く目を養ってください。

見る目を養うには、さまざまな経験が必要でしょうか。
経験は大切ですが、経験の「量」が重要なわけではありません。私は高校まで全羅道の光州(クァンジュ)にいました。当時の光州には、今のように見るものがあまりなかったんです。美術館もなければ、公演もありませんでした。だからこそ、毎週末MTVで流れていたミュージックビデオが、すごく貴重だったんです。マドンナやクイーンのミュージックビデオを観ながら、人物だけでなく、セットや小物まで一つ残らず見ていました。ソウルに来るとイタリア版VOGUEを買って、すみずみまでじっくり眺めましたね。最近は見るものがあふれていますが、すぐに忘れてしまうじゃないですか。経験の量よりも質、密度が大切なんです。
そうして築かれてきたパク・テユンさんの最大の魅力は、何だと思いますか。
クライアントが私のメイクを気に入ってくれる理由でもあるんですが、私はどんなテーマでも、結局は「人がきれいに見える表現」を追求していて、それが得意なんです。型にはまらない斬新なファッションであっても、その中には美しさが存在しますよね。エディターたちは個性や違いを強調するので、ハイファッションを必ずしもきれいに表現するわけではありませんが、結局それを消費するのは一般の人々なので、大衆が共感できるメイクでなければならないんです。それが簡単ではないんですが、私はそれがちょっと得意なんだと思います。(笑)
自分だけのメイクを表現したい読者に、一言お願いします。
まず、自分のためにするのか、誰かによく見られるためにするのかを決めてください。もし人から見てきれいに見えるメイクを望むなら、世の中が決めた美しさに合わせる必要があるでしょう。でも、自分を表現するためのメイクなら、ただ自分が見てきれいだと思うものをすればいいんです。自分のためにするのに、どうしてブルベやイエベをそんなに気にするんでしょうか?どのリップカラーが似合うか本当によく聞かれるんですが、どうしてそれを人に聞くのかわからないんです。パッと見てきれいだと思ったら、塗ればいい。人に似合わないと言われたって、いいじゃないですか。自分が見てきれいで、自分が好きならそれでいいんです。ブルベ、イエベ、ブライト……私は名前も全部覚えきれないんですが、メディアの影響が大きいと思います。そういうものに振り回されず、堂々と開き直ってください。私は個性的なメイクをしている人を見ると、すごくかっこいいと思うんです。自分だけのシグネチャーメイクを持っている人っていますよね。自分らしく、堂々と、自分だけのシグネチャーメイクをつくってみてください。

パク・テユンさんのスタイルを一言で表すとしたら?
うーん、一言では難しいですね。ブランドにたとえるなら、シャネルを思い浮かべるとクラシックでありながらシックですよね。私も、メイクでも料理でも、クラシックをベースにしながら、そこにエッジを効かせることを大切にしている気がします。
ニュービューティーアイコンに選ばれた感想もお聞かせください。
サンキューです。(笑)本当に光栄です。自分という人間ならではの美しさを追求している点を認めてもらえたことがうれしいです。「アイコン」という言葉には、インスピレーションの対象という意味も込められているじゃないですか。私ならではのものがあるから選んでいただけたのだと思いますし、皆さんがご自身の固有のものを見つけるうえで、私が少しでも役に立てたらうれしいです。
時が流れても変わらない「自分らしい美しさ」については、どうお考えですか。
自分が生まれ持ったものこそが自分らしさであり、それをうまく生かして美しさを表現する人は、時が流れても変わらないのだと思います。オードリー・ヘプバーンも、背が高くて手が骨ばっていることが悩みだったそうです。彼女の写真や映像を見ると、ジバンシィの衣装にフラットシューズや手袋を合わせたスタイリングをよくしていましたよね。自分の外見的な特徴を乗り越えていく過程で、自分だけの美しさがつくられていったのだと思います。コンプレックスがかえって自分を定義し、人と区別する素晴らしい要素になり得ると信じて、自分自身を研究し、磨いていけば、時が流れても変わらない美しさを手にできるはずです。

パク・テユンさんならではの美しさをつくるための習慣は何ですか。
家を美しくするには、基礎から外装、内装、最後の仕上げまで、どれ一つ欠けてはいけないように、美しさのためにもライフスタイル全体をケアの対象にしなければなりません。インフルエンサーやYouTuberとして活動するようになって、ケアにはより気を使っていますが、普段何もせず、たまに皮膚科に行くだけでは、ケアではないと思っています。心構え、食生活、睡眠習慣、運動など、すべてが総合的に整ってこそ実を結ぶんです。だから、目を覚ました瞬間からいい習慣を続けられるよう努力しています。
テユンさんのシグネチャーコンテンツといえば、料理も欠かせません。料理もケアの一環なんですか。
ケアというより、食べるのも好きだし、人に食べてもらうのも好きなので料理をしています。いろいろやってみた結果、さまざまなテクニックを駆使するよりも、いい素材を使った料理がいちばんおいしいんですよ。いいお肉や新鮮な魚に、質のいい塩だけを振って直火で焼くのがいちばんおいしいんです。ケアも同じです。何もしていない素肌がいちばんきれいで、素顔をきれいに見せるにはいい肌が必要です。いい肌のためにはインナービューティーの習慣が必要なんです。食習慣も変えて、生活パターンも整えて。すべてがうまくかみ合うと、好循環が生まれます。
業界第一世代のメイクアップアーティストとして、アモーレパシフィックについてどう思われているかも気になります。
アモーレパシフィック、リスペクトしています。まず、ヘリテージがありますよね。Kビューティーブランドの中で、単なる流通ビジネスではなく、本当の意味で「ビューティー」を広めているところはなかなかありません。アモーレパシフィックはKビューティーを世界に広げ、その影響力を保ち続けているので、いつも応援しています。
今後の計画をお聞かせください。
フードの分野をもう少し深く掘り下げてみようと思っています。以前のように、ビジネスとしてレストランを開くというわけではなく、フードコンテンツをつくりたいんです。素材の本質を生かしながら、健康的に食べられる料理を研究して紹介したいと思っています。私は、世界というのは、小さな単位から少しずつ広がっていくものだと思っているんです。メイクの仕事を通して身につけた原理が、フードにも、フラワーアレンジメントにも同じように当てはまるんですよ。たとえば、メイクにおけるモデルはフードでいういい食材で、塩・オリーブオイル・こしょうのような基本の調味料はベースの表現、その上のドレッシングはポイントメイク、色や質感、光の配置は盛り付けのようなものです。共通点が多いんですよね。今後の活動にもぜひご期待ください。

「ニュービューティーアイコン」では、世の中にインスピレーションを与える人々に出会い、それぞれの人生から見つけ出した「自分らしい美しさ」について聞きます。
コンテンツ制作 カヤメディア
企画総括 アモーレパシフィックコミュニケーション戦略チーム
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