いまどきのESGあれこれ #1
文
チョ・ヒョニ サステナビリティ経営センター
Editor’s Note
告白します。私たちはESGオタクです。会議室でカーボンフットプリントの話に目を輝かせ、サステナビリティレポートを読みながら思わず膝を打ちます。周りから「で、それって何?」と何度も聞かれた末に、いっそのこと書いてみようと思い立ちました。化粧品の生老病死からトナカイの生存記まで、予想を少し裏切るESGのお話を用意しました。読んでいるうちに、いつの間にか皆さんもオタクになっているかもしれません。「いまどきのESGあれこれ」は隔月でお届けします。あなたも今日からオタクの仲間入り!
#INTRO
サプライズクイズを一つお出しします。
Q. 次のうち、より環境に負荷をかけるものはどちらでしょうか?
A) ガラス瓶の化粧品 B) プラスチック容器の化粧品
A) 韓国生産の原料 B) アマゾンから輸入した原料
A) 天然・オーガニック商品 B) 合成原料でつくった商品
A) 大容量化粧品1つ B) 小容量化粧品複数個
選びましたか。
実は、これらの質問には明確な正解がありません。正確に言えば今選んだ答えが間違っている可能性がかなり高いのです。納得がいかないかもしれません。十分合理的に判断した選択だったはずですから。ところが、データを見ると私たちが当然だと信じてきた環境への配慮の常識が、LCAの前では一つずつ揺らぎ始めます。今日のコラムではそんな少し不都合で、だからこそ興味深い真実についてお話ししようと思います。
「ちょっと待って、LCAって何のこと」って思われたかもしれません。LCAは、Life Cycle Assessmentの略で、日本語では「ライフサイクルアセスメント」と言います。簡単に言うと、製品が生産されてから廃棄されるまで――原料の採取、製造、輸送、使用、廃棄――のライフサイクル全体で環境に及ぼす影響を数字で測定する方法です。化粧品1つの履歴書を環境の視点から最初から最後まで辿っていくものだと理解していただければいいと思います。
それでは、LCAの視点から私たちのエコの常識を一つずつ見直してみましょう。
[Case 1] ガラス瓶はプラスチックより環境にやさしい。本当でしょうか。
スーパーで同じ商品がガラス瓶とプラスチック容器にそれぞれ入っていたら、あなたはどちらを選びますか。
ほとんどの人がガラスを選びます。なぜだか、高級そうで、プラスチックよりは罪悪感も少なく、体にも悪くなさそうなので、ガラスの方が正しい選択に思えます。
ですが、ガラスが私たちの手元に届くまでの過程をたどってみると、話は変わってきます。ガラスをつくるには、砂と石灰石を約1,500~1,700°Cまで加熱する必要があります。家庭用オーブンの最高温度が一般的に250°Cであることを考えると、その6~7倍に達する熱が必要になるということです。そのうえ、ガラスはプラスチックより一般的に数倍以上重量があります。同じ内容物を入れた容器を全国の店舗へ運ぶとき、その重量の差ははるかに多くの燃料消費につながります。
カーボンフットプリントだけで比較すると、製造段階でガラスのCO₂排出量がプラスチックの最大3倍になる場合もあります。では、ガラスを使ってはいけないのでしょうか。
そうではありません。ガラスの強みは別にあります。それは、どれだけ長く、どれだけ繰り返し再利用できるかという点です。同じ容器を数十回詰め替えて使うとしたら、ガラスには明らかなメリットがあります。しかし、一度使って捨てるガラス瓶は、環境に良かれと思って選んだのに、環境により大きな負担となる可能性があります。
私たちが「素材」だけを見るとき、LCAは「ライフサイクル全体」を見ています。
[Case 2] 紙包装=環境にやさしい包装?必ずしもそうではありません。
最近、プラスチックを紙に置き換えるブランドが多くなりました。消費者の反応もよく、方向性も合っているように思えます。
ところが、紙がつくられる過程をLCAの視点で見ると、予想外の数値が見えてきます。
紙をつくるためには、木を切らなければならず、パルプに加工する工程で水と化学物質が大量に使われます。同じ量の内容物を保護するには、プラスチックより多くの量の紙が必要となる場合もあります。そのため、淡水使用量、土地利用の面では、紙が意外に無視できない環境への影響を示し、森林伐採を伴う場合、生物多様性にまで影響を及ぼす可能性があります。
一方、プラスチックには、紙にはない致命的な弱点があります――海洋汚染、マイクロプラスチック、地中に埋めても数百年間分解されないということ。
結局、紙には紙の課題が、プラスチックにはプラスチックの課題があります。
何を最も重視するかによって正解が違ってきます。世の中のすべての環境問題を一度に解決する完璧な素材はありません。
[Case 3] 固形シャンプー vs 液体シャンプー:バー(Bar)タイプが常に正解なのか。
固形シャンプーバーはプラスチック容器がなく、軽くて、濃縮されています。表面的に見れば、完璧な環境に配慮した商品のように見えます。実際に包装材や輸送段階ではシャンプーバーのカーボンフットプリントが液体シャンプーよりかなり低いとされています。これは事実です。
ところが、LCAはこれにとどまりません。お客様が浴室で商品を使うその瞬間にまで踏み込み、新たな環境負荷を数字で示します。
お客様のどのような行動が、この完璧に環境にやさしく見える商品の環境負荷を高めるのでしょうか。第一に、固形シャンプーは製造過程がより複雑でエネルギー消費量が高い場合があります。固形にするための界面活性剤の合成工程が追加されるためです。第二に、消費者の使用段階で固形シャンプーは、液体より泡立てるために、より多くこする傾向があるので1回の使用量が増えることがあります。第三に、固形シャンプーは湿った浴室で溶けるのが早いため、ロス率が高いという消費者の使用データもあります。
シャンプーバーが悪いというのではありません。包装材削減効果は明らかです。ただ、「絶対に固形がいい」という結論を下す前に、どのような原料を使い、どのように使われているかも確認する必要があります。
環境に配慮した商品を開発するときも、細部までの確認が必要です。
[Case 4] 「天然」、「オーガニック」= 環境にやさしい?
化粧品売り場で「自然由来98%」、「オーガニック原料使用」、「天然成分」のようなフレーズを見ると、なぜだか安心します。ですが、LCAの視点からこれらの原料を実際に評価してみると、思ったよりも複雑な結果が出ます。
ラベンダーエッセンシャルオイル1kgを得るためには、ラベンダーの花を数百kg収穫しなければなりません。その過程で農地や水が多く使われ、収穫と蒸留にもエネルギーが必要です。パーム油の場合は、パーム農園の拡大に伴う熱帯雨林の破壊により、LCAの土地利用の項目で極めて高い環境負荷を示すことがあります。
一方、一部の合成原料は、はるかに少ないエネルギーと水で同等の効果を実現することができます。合成ビタミンCは、天然原料から抽出するより、はるかに効率的な工程で製造でき、低い環境負荷を示します。
では、オーガニック原料はどうでしょうか。オーガニック農法は、合成農薬や肥料を使わないので土壌や水質にはいいです。ところが、単位面積あたりの収穫量が一般の農法より約20-25%少ないのです。同じ量の原料を得るには、より広い土地とより多くの水が必要となり、その結果、土地利用や水消費の面で環境負荷が高くなる場合があります。
もちろん、生態系循環への寄与、小規模農家への支援などといったLCAの数字では測れない社会的・経済的価値もあります。LCAが「合成の方が絶対的によい」とか、「オーガニックを使うな」とか言っているのではありません。LCAが伝えているのはたった一つです。
「天然」「オーガニック」という言葉だけで、環境へのやさしさが保証されるわけではありません。
[Case 5] 国産が輸入品より低炭素?船の方がトラックよりも低炭素です!
「国産原料」、「ローカルソーシング」、近隣地域で生産されたので輸送時に発生するCO₂排出量も少ないように思えます。一見するともっともらしく聞こえます。
ところが、どのような輸送手段を使うかによって話は完全に変わります。貨物船は単位重量あたりのCO₂排出量がトラックの数十分の一の水準にすぎません。船は膨大な量を一度に積んで運べるからです。船で数千キロメートルを運ばれてきた輸入原料の方が、温室で栽培された国産原料よりも、CO₂排出量がむしろ少ない場合があります。
もちろん、国産原料には地域経済への貢献、原料の鮮度、サプライチェーンの安定性などといった別の価値もあります。しかし、CO₂排出量だけに絞って考えると、
「どこから来たのか」より「どのようにつくられたのか」の方がより重要な場合もあります。
[Case 6] 大容量が小容量より環境負荷が少ない――使い切るなら。

出典:AIで生成した画像
小容量の商品は同量の内容物を使うために、より多くの包装材を必要とし、購入する回数も、配送の回数も増えます。そのため、大容量の方が絶対的に環境にやさしいように思えます。
概ねそのとおりです。実際に包装材の使用量に比べて内容物の割合を高めることが環境負荷を軽減する効果的な方法の一つです。LCAでも大容量の商品は包装材に対する内容物の比率が高いため、環境負荷の面で有利に評価されます。
ですが、現実的な部分も併せて考慮すべきです。今ドレッサーや浴室の棚に半分ほど残ったまま放置されている商品はありませんか。使いかけのクリーム、使用期限を過ぎた美容液、肌に合わず放置したファンデーション。中身が残ったまま捨てられると、その商品をつくるために生じた環境負荷も、その分無駄になってしまいます。1gあたりの環境負荷がどれだけ低くても、半分しか使わずに捨ててしまえば、実質的な負荷は2倍になるわけです。大容量が有利だというのは、あくまで最後まで使い切ることが前提なのです。
小容量の商品が様々な試みを可能にさせ、無駄を減らすのであれば、大容量よりも、むしろ環境への影響が小さい場合もあります。LCAで確かめてみる必要がありそうですね。
#OUTRO
頭がすっかり混乱してきたでしょうか。
でしたら、このコラムをきちんと読んでくださった証拠です!
「じゃ、何が正解なの?ガラスなの、プラスチックなの?天然なの、合成なの?商品を使い切ればいいってこと?一体どうすればいいの?」
このような混乱こそが、実はLCAが私たちに投げかけている最も正直なメッセージです。世の中のすべての環境問題を同時に解決する完璧な素材も、完璧な成分も、完璧な包装もありません。そして、地球の環境問題は、「ガラス」、「天然」のような一つの言葉で解決するほど、単純ではありません。
LCAはその複雑さを単純化せずに、そのまま示してくれます。そして、その複雑なデータを前に、私たちに次のような問いを投げかけさせます。
「私たちのブランドが、私たちの商品が、今一番減らすべき環境負荷は何なのかを把握できているだろうか」
この問いにデータで答えられるようになったとき、初めて本物の環境への配慮が始まります。
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